学研まんが地震のひみつ

学習まんがの制作

2012年に、学研の学習まんがで有名な「ひみつシリーズ」で地震の本を制作させていただいた。内容の構成とコラム執筆、DTPを担当した。漫画家さんは、吉川豊さん。緻密でていねいな絵と、人間味のあるキャラクターがとても魅力的だ。(表紙のイラストは、シリーズで統一している別の作家さん)

 

f:id:JoeMatsumoto:20131203133415j:plain

 

f:id:JoeMatsumoto:20131209172304j:plain

 この迫力。人物の魅力だけでなく、地震のこわさもリアルに伝わる。

 

仕事のおもな内容

漫画家の吉川さんは、物語の構成力も高いかたで、本来的には、編集で細かい指示を出さずとも全編を仕上げてしまう能力がある。ただ、このときは、制作期間と内容の専門性などの制約もあったため、一部の誌面では、ぼくがラフを制作した。自分の描いたラフが、ハイレベルな作画に仕上がっていくのには、とても興奮した。

 

f:id:JoeMatsumoto:20131203133454j:plain粗末なラフが…→f:id:JoeMatsumoto:20131209173231j:plainこの作画!

 

本シリーズでは、統一感を保つために、表紙まわり、目次、口絵のデザインは決まった方がいるということで、DTPにおいては漫画本編とコラムを請けた。実際には、元デザイナーの妻がほとんど仕上げてくれ、ぼくは初校以降の修正とフィニッシュまでを担当した。

f:id:JoeMatsumoto:20131209172308j:plain

 コラムは中身も執筆。勉強になることが多く、とても楽しかった。

 

この仕事で得たもの

東日本大震災以来、あらためて地震学のいまを知る、とても良い機会になった。もともとは、数十年前に発売した、旧「地震のひみつ」の内容を使いまわす話だったが、当時と今では、地震学がずいぶん変化してきたことがわかり、ほぼすべて刷新されることになった。

物理学のような堅固な基礎をもつ分野とくらべれば、地震学はまだまだ変化の多い学問で、その生モノな感じが、ぼくにはとても楽しかった。

資料として監修の先生に借りた『大陸と大洋の起源』は、大陸移動説を唱えたことで有名なウェゲナーの著作だが、この著作を通じて繰り広げられる 大陸移動説 VS ほかの論説 のバトルも、むちゃくちゃ面白かった。

現在、結果的に歴史の勝利者であるウェゲナーが、存命中には認められなかったという悲劇は、しばしば科学者の頑迷さや信奉心のようなものとして描かれる。けれど、反対者にだって(少なくとも当時の観測水準からすれば)相当な根拠があったという当たり前の事実も再認識できた。もちろん、今回の漫画ではそのようなことを踏まえて描いた。

学ぶ機会の少なかった分野だけに、とても刺激に満ちた仕事だった。

 

 

 

科学技術振興機構での仕事

 書籍の制作担当

2009.11月~2013.3月まで、独立行政法人科学技術振興機構(略称JST)で、全国の小中学校にくばる子ども向け冊子の制作を担当した。このシリーズは、タイトルにうたう素朴な疑問を入りぐちに、科学的な視点でさまざまことを学べる、イラストあり漫画ありの読み物。ウェブサイトから全ページを読むことができる。

 

2010年『葉っぱはどうして緑色なの?』

f:id:JoeMatsumoto:20131203133020j:plain

  

 2011年『海の水はどうしてしょっぱいの?』

f:id:JoeMatsumoto:20131203133332j:plain

 

2012年『放射線ってなあに?』

f:id:JoeMatsumoto:20131203133339j:plain

各リンク先のウェブサイトはCAMP4の飯田さんの下でデザインしていただいた。JSTのウェブサイトのなかでは、ダントツのいい感じだと、勝手に思っている。 

 

仕事のおもな内容

本の制作担当とはいったい何者か。たぶん、JSTのような公共団体の制作担当者といえば、ふつう、団体と委託企業の組織間をとりもつ仕事だろう。方針だけはお伝えし、制作はあくまでアウトソーシングという感じだ。でも、この仕事ではJST本体が雑誌編集部をもっていることも影響し、まずJST編集部の考え方と伝える者として、委託企業の編集部にどんどん関与し、ともに制作していくことが求められた。

 

 f:id:JoeMatsumoto:20131203133113j:plain

台割や全体のサムネイルをまとめる場合もあれば……

 

 f:id:JoeMatsumoto:20131203133128j:plainf:id:JoeMatsumoto:20130426224421j:plain

各ページでのラフを切ったり、原稿を書いたりすることもあった。

 

この仕事で得たもの

民間の制作と大きく異なるのは、内容に意見し、承認する委員会が存在し、その委員の先生方が、ていねいな赤字を返してくれること。ひとつの書籍に対して、多いときには13人もの赤字が一挙にくる。取りまとめるだけでも1日がかりの、なかなかたいへんな作業になる。

たいへんではあるけれど、得るものは多い。自分たちの制作物に対して、名のある専門家の方々が10人以上も赤字をくれるという機会は、まず、ほかに無いからだ。「それは知らなかった」「なるほど、確かにそう誤解する余地がある…」「そういう教育上の観点は気づかなかった」などと日々学ぶことばかり。

また、そうした貴重な指摘や意見を受けつつも、ときに編集的な理由でそのままには反映しない場合がある。このときは、聞かれても堂々と答えられるよう、自分なりの回答を用意しなければならない。これは、自分たちの「編集判断」というものをロジカルに説明するための絶好のトレーニングになった。